みなさんこんにちは。
日本の大学全部行った男、山内太地です。
理系学部にはどんな分野があって、それぞれどんな仕事に就くの? 理系学部の選び方を対談形式で解説!
という話をしたいと思います。
今日は理系学部の 選び方ということで名古屋工業大学の高木繁先生から
お話をお伺いいたします。
山 内「高校生ってだいたい2年生の時に文系・理系ってわかれていく学校が多いですが、
理系を選んだ場合、どんな学部がよいのかを悩む人が非常に多いので、
教えていただければと思います。」
高木先生「そもそも『文系』と『理系』は何が違うののか、ということなんですけど、
文系は『人間について研究する学問』中心になっているとよく言います。
理系は『物について研究する学問』だと。
ただ、物って言った時に無機質なものばかり考えちゃうんですけど、
実は理系の中でも人間を対象にする分野があって、
いわゆる医学部・歯学部・薬学部。そういう世界があります。
『物』の中でも例えば、機械とか、電気だと部品とか
そういう感じの無機質ですし、情報だと数字ですよね。
生物と書いて私たちは『なまもの』と読むんです。
生きてても死んでてもいいって言う風に使うんですけど、
バイオ系は農学部や理学部の生物系になります。
こちらは、『物』と言っても生きている『物』を扱うので少し感じが違います。
また、工学部でもバイオ系に最近力をいれてきています。
まずは、そこから自分は『物』の中のどの辺に興味があるのか
というところをひとつ押さえてみるといいと思います。」
山 内「よく私が質問されるのは、『理学部』と『工学部』の違いが
よく分かりませんということなのですが、
これはどういう風に考えたらよいでしょうか?」
高木先生「私自身も理学部の出身で、理学部はよく基礎研究っていいます。
でも、それではわかりにくいですよね。また、真理の研究とか探求という方もしますが、
簡単に言うと、0から1を見出す。何もわかってないところから、
どういう仕組みで起きてるのかという、その原理を明らかにするそれが理学部です。
ただ、見つけ出したことがなんの役に立つか、分からないわけです。役に立たないかもしれない。
工学部とか農学部は実学。役に立つことをしなくてはいけないので、
理学部の人たちが見つけてくれた、たくさんの未知の中から役に立ちそうなものをピックアップして、
それを10とか100にする。
必ずうまくいくとは言いませんけれども、そういう形でアプローチしていく。
それが工学部になります。」
高木先生「化学に関しては実はあんまり大きな差はないですね。
昔は工学部というのは、バイオ系はやらないし、生物に関しての授業もほとんどないっていうのが
特色だったんですけど、
今はもう工学部も理学部もどちらもあるので、あんまり差がないですね。
ただし、情報に関してはかなり大きな差がある場合があり、
元々は人工知能というのは、理学部で派生したものです。
理学部の数学から出来たものなので。
例えば、東京大学ですと理学部の情報科学科に人工知能がおかれていて、
工学部にもあるというケースがありますから、
そこだけ注意すれば良いと思います。
恐らく、理学部の情報研究自体は基本的には人工知能が多くなる。
ハードウェアを絡めた話は多くなる。
単純に言っていいのか分かりませんけどそういう感じだと思います。」
山 内「理学部と工学部で就職先ってだいぶ違うんでしょうか?」
高木先生「これはちょっと厳しい言い方になって申し訳ないのですが、工学部は普通にメーカーに行きます。
強いて言うと、今は高校の先生の資格が取れるところが減ってしまったので、
教員っていう選択肢あまりなくなっているんです。
理学部の場合は、東京大学や京都大学や大阪大学クラスになると普通に色々なとことろにいけます。
メーカーでもなんでも。
ところが、理学部の下のほうになってくると
なかなか数学とか物理系を直接活かせる職場が見つからないので、
教員とかの形が多くなってくるかと思います。」
山 内「なるほど」
高木先生「ただ、数学だからといって就職先が無いってわけじゃなくて
金融系とかには就職はしてますから、全然無いとかそう言う風に考える必要もないと思います。」
山 内「国立大学ですと、多くの学生が大学院まで 進学して学ぶイメージがあるんですが、
やはり理学・工学は大学院まで行って勉強した方が良いんでしょうか?」
高木先生「そうですね。最近の科学技術の進歩はものすごく激しいので、
4年間では教えきれない状態になってます。
一昔前ですと、基礎研究が終わった段階で、会社に入っても十分通用したんですけど、
今は知識が足りないというか、まだ扱ってないことが沢山あったりするので、大学院まで行ってないと、
少なくても研究関係、専門職みたいなものには就かせてもらえないということになっていると思います。
ただ、中小企業は必ずしも、そうでないわけです。」
山 内「冒頭で、バイオを学びたい場合に、
理学・工学・農学の色々な選択があるという風に先生おっしゃったんですが、
農学部と工学部の違いってどんな所ですか?」
高木先生「元々、生物の要素が大きくはいってるのが農学部。一言で言うとそうなんですけど、
『ものづくり』をやるときにスタイルが大分違います。
工学部は、自分の手で全部作ってます。
例えば機械ですと部品を加工して作ってそれを組み立てて、ロボットなどをつくる。
ところが、農学部はそれを植物とか微生物にやらせます。
簡単に言うと昔で言う発酵ですね。アルコールを作ったりとか乳酸をつくったりとか。
それは、いくら品種改良をやっても思い通りのものを
バクテリアが作ってくれるかどうかはわからないって
言うところがあるので、効率は非常にいいんですけど成功するのは難しい。
最近は遺伝子工学を利用してバクテリアのDNAを書き換え、
自分の思い通りのものを作らせるという研究も増えてきているので、
実は農学部と工学部の差はだんだんなくなってきていると思います。」
山 内「一方で理学部なんですが数学科・物理学科・科学科といった名前は高校にもありますから
イメージが湧きやすいと思うんですね 。
その中でも、例えば東京大学・名古屋大学・大阪大学どこでも数学科・物理学科がありますが、
これらの研究の内容とか学部の構成というのは大学ごとに随分違うものなんでしょうか?」
高木先生「あんまり大きな差はないです。
例えば、名古屋大学と大阪大学の違いを一言で言ってしまえば、
山 内「物理学科で天文できるんですか?」
高木先生「はい。なので恐らく、天文学科がない大学ではそちらに進むことにになると思います。
ですから、学べることに差が出るほど大きく分かれているわけではないんですけど、
その学科の名称と中身をよく調べておかないと、学びたいことを学べなくなる危険があるのは
理学部でも一緒だと思います。」
山 内「東京大学ですと、地球惑星物理と地球惑星環境の違いが素人には全然わからないんですけど…」
高木先生「実を言うと、昔から地球物理ということころがあって、
これは例えば地震研究とかそういうところで使います。
私も地球惑星環境自体細かいこと知らないんですけど、温暖化の研究とかをしてると聞いてます。
少し昔は地球の動き、地震とか本当に物理だけを使ってやる学問だったのが、
物理とか科学とか生物とか色々な物を取り入れて、
地学をもう一回見直そうというのが地球惑星環境になるんだと思います。」
山 内「あとは 理学・工学と違って農学部って普通科高校の生徒のイメージがわかない分野だと思うんです。
農業のイメージしかないんですが、農学部が扱う領域って他にどういったものがあるんでしょう?」
高木先生「私自身、フィールドという言葉をよく使っていて、得意分野を重ねてるんです。
東海地区を中心とした周りの大学の場合は、例えば三重大学というと唯一、
演習船を持ってます。水産が得意です。
それに対して岐阜大学は周囲に海もないですけど、逆に獣医がある。水産ではなく、畜産が強いんです。
信州大学は周囲に海もなく獣医もないけど、
山が多くて高度2000mのところ等にも演習所があり、高山とか森林が強いんです。
静岡大学というと、園芸が強く、お茶やみかんの地なんです。
鳥取大学はというと、聞くまでもないかもしれませんが、梨の研究や乾燥地に非常に強いです。
神戸大学は、どうしてそういう経緯になったかがわからないんですが、
昔から食糧生産全般が得意なんです。
各大学のすごい個性が出てます。だから、偏差値だけで選ぶと失敗するのが農学部になると思います。」
山 内「偏差値だけではなくて、その大学や地域とかの扱う食べ物とかその森だったり海だったり、
強みをよく知った方が良いんですね。
同じバイオといっても非常に領域が広いんですね。」
高木先生「やっぱり三重は、バイオって言っても水産が強い。海洋生物も強いです。
岐阜は元々獣医関係になってくる。
なぜ、静岡で園芸になっているのかって言うと、これは米の研究は新潟というのがあるので、
別に静岡大学はやらなくても、静岡は温暖な気候を利用して
独特なものをやってほしいというのがあったんです。
元々、国策でこのようなのは決められたという話です。」
山 内「それぞれの地域にあった研究分野になっているということなんですね。
さて高校生の皆さん、理系に行く時にいわゆる医学部・歯学部・薬学部といった
医療系は仕事のイメージがすごく湧きやすいので、今日は長くは触れませんでした。
一方、どちらかというと基礎的な学問である理学部・工学部・農学部についての違いを
高木先生からお伺いしましたので、
後は皆さんの方で志望の大学や各学科の 教育・研究内容などよく調べて志望校を選んで下さい。
高木先生、本日はどうもありがとうございました。」
高木先生「ありがとうございました。」
いかがでしたでしょうか。多くの受験生が、大学受験をする際に様々なことで悩みを抱えています。
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